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   ドイツの経済政策
 景気対策に関連する補足説明
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このページではドイツの景気対策に関連する制度や用語などについて補足的に説明していく予定です。
* 乗用車購入に対する環境(廃車)奨励金 (UmweltPraemie, Abwrackpraemie)
* 労働時間短縮手当 (Kurzarbeitergeld)
* 子供(児童)手当および子供(児童)控除 (Kindergeld, Kinderfreibetrag)
* 財政計画 (Finanzplan)
* 航空税(Luftverkehrssteuer)
* 債務抑制条項(Schuldenbremse)
* ヨーロッパの若者の失業率

乗用車購入に対する環境奨励金(廃車奨励金、UmweltPraemie、Abwrackpraemie)

連邦政府は、第2次景気対策において、古い乗用車の廃棄と環境への負担の少ない新しい乗用車の購入を促進し、あわせて、乗用車の買い控えに対処するため、個人による乗用車の買い替えに対して2,500ユーロの環境奨励金(廃車奨励金とも呼ばれる)を支給することを決定している。
2009年1月14日から同年12月31日までの買い替えが対象で、予算は総額15億ユーロ。

注)乗用車の販売拡大に大きな効果をあげており、2009年4月初めまでに120万件の申請があったと報じられている。ドイツ政府は景気刺激効果に鑑み、2009年4月8日の閣議で環境奨励金のための予算枠を大幅に拡大して50億ユーロとすることを決定した。申請の期限は従来どおり2009年末。

連邦政府が2009127日の閣議で決定した環境奨励金を申請する際の条件等の概要は次のとおり。

申請の条件
*申請者は個人であること。
*古い車は廃車(廃棄)の時点から逆算して少なくとも1年間継続して当該所有者がドイツにおいて自分の名義で登録していたものでなければならない。
*古い乗用車は廃車(廃棄)時点から少なくとも9年前に初めて新車登録されたものでなければならない。
*古い車の廃棄は2009年1月14日から2009年12月31日の間に行われなければならない。
*廃棄は公認の解体会社が発行する廃車令(Altfahrzeugverordnung)に基づく再利用のための処理証明書により証明され、かつ解体会社の責任者により車体が裁断設備にかけられることが証明されなければならない。
*新しい車は初めて登録されたものであるか、または、申請者が登録した時点から最大で1年間、自動車メーカー、その販売部門ないしはその従業員、自動車ディーラー、自動車メーカー所有のローン会社、レンタカー会社または自動車リース会社の名義で登録されていたもの(いわゆるJahreswagen=1年物新古車)でなければならない。
*新しい車は少なくともEuro4の排ガス規制を満たすものでなければならない。リース車の場合も同様。
*新しい車は国内において申請者名義で登録されていなければならない。車の取得と登録は2009年1月14日から2009年12月31日の間に行わなければならない。
*古い車の所有者と新しい車の所有者は同一でなければならない。

申請方法
環境奨励金の申請は次の証明書類を添付して所定の申請書に本人の署名をして郵便で連邦経済輸出管理局に送付することで行うことができる。(注:その後、インターネットでの受付に変更)
*公認の解体業経営者により廃車令に基づいて発行された自動車登録令第15条に基づく再利用のための処理証明書
*古い自動車の車体が鉄くずとして解体され、廃車令第5条第2項および関連する付則第4号の要件を満たすため、裁断設備にかけられる旨の公認の解体事業経営者による証明を付した申請書。
*自動車登録機関による廃車証明を付した登録証第1部(Fahrzeugschein=登録カード)のコピーおよびボイドとされた登録証第II部(Fahrzeugbrief=保有者証)のオリジナル。
*申請者名義による新車の登録を証明する登録証第I部(Fahrzeugschein=登録カード)および登録証第II部(Fahrzeugbrief=保有者証)のコピー
*新車取得に関する領収証ないしはリース契約書のコピー。
*自動車メーカー従業員から購入した1年もの新古車については、当該乗用車が売買の時点でメーカーの従業員の名義であったことを証明するメーカーの証明書。
*連邦経済輸出管理局では、指定された書式以外の申請や欠陥のある申請は処理できないので、申請者に返送する。
*環境奨励金は申請の到着順に給付していく。

(出所:連邦経済・技術省)

注)環境奨励金についてドイツ国内では、環境保護に十分配慮されているとはいえない、中古車価格の下落要因となっているといった見方もある。

労働時間短縮手当(時短手当、Kurzarbeitergeld)

労働時間が通常よりも短縮され、その分賃金が削減される場合に支給される手当。雇用主が労働者の労働時間を短縮することは解雇保護法(Kuendigungsschutzgesetz)第19条で認められており、その条件は社会法典3(Sozialgesetzbuch 3=SGB III)の第169条から第182条で定められている。不況時短手当、季節時短手当、転職時短手当の3種類が制度化されている。

不況時短手当(Konjunkturelles Kurzarbeitergeld)は、事業所ないしは事業所の特定部門において経済的要因または不可避的出来事の結果として通常の週当たり労働時間が一時的に短縮される場合に支給される。
ねらいは、
a)事業所については訓練した従業員を維持することを可能にし、
b)従業員については職場を維持し、
c)従業員に対して労働時間短縮による賃金の減少を埋め合わせることにある。
支給の条件としては
a)経済上の理由または不可抗力によって、一時的な労働時間短縮が不可避であり、
b)各暦月(有資格期間)において、当該事業所に雇用される従業員の少なくとも少なくとも3分の2が1ヵ月あたりの報酬総額の10%以上の報酬削減の対象となっていることなどの規定がある。
c)ただし、労働当局の判断によっては手当の支給よりも他の職場の斡旋を優先される場合がある。
支給額
削減された賃金の60%ないし67%(子供の有無による)。
支給期間
6ヵ月。経済情勢によっては延長できる。

季節時短手当(Saison-Kurzarbeitergeld)は建設業など季節・天候要因によって労働が不可能となる場合にも雇用関係を安定させるために支給される。
転職時短手当(Transfer-Kurzarbeitergled)は企業が再編成されるにあたって余剰となる労働者を再就職に向けて訓練する際などに支給される。

支給の条件や期間は経済情勢に応じてその都度政令によって定められる。

(出所:連邦政府、連邦労働エージェンシー資料)

子供(児童)手当および子供(児童)控除(Kindergeld, Kinderfreibetrag)

ドイツの子供(児童)手当(以下、子供手当)は国からの給付金ではなく、親の所得に対する所得税のうち、子供の生存に必要な最低限の金額に対する部分を相殺する意味で支給されるものとなっています。

その根源にあるのは「人間の尊厳は冒してはならない。人間の尊厳を尊重し、守るのはあらゆる国家権力の義務である」とする基本法(憲法)第1条およびドイツが「社会的」連邦国家であることを宣言した第20条です。

ドイツ国民はこれを基に社会保障制度などによって尊厳を維持し、生存するのに必要な最低限の条件(Existenzminimum)が保証されることになっています。
子供についても当然必要な最低限度の生活が保証されなければならず、親の所得のうち子供の生存に必要な最低限の部分は課税されるべきではないとの考えから、所得税法によって「子供控除(Kinderfreibetrag)」と「子供手当(Kindergeld)」の2本立て(二者択一)の制度が定められています。
2010年1月からは子供控除の額は7,008ユーロに引き上げられ、子供手当は一人あたり20ユーロ引き上げられて、下の表のようになりました。(単位はユーロ)

2010年11日から

2009年11日から

2008年末まで

1

184

164

154

2

184

164

154

3

190

170

154

4子およびそれ以上

215

195

179


これでいくと、親の所得には課税最低所得(逆に言えば基礎控除)や託児費用控除などもありますから、税額で子供手当を上回る金額の控除を受けるためには、一人親の場合でも年間3万5,000ユーロ以上の所得が必要になると計算されています。したがって、大部分は子供控除ではなく子供手当を受け取ることになるようです。

子供手当ては定期的に支給され、年末のいわば確定申告で子供控除の方が有利であると判定されれば、子供手当を上回る部分について控除が行われることになります。
以上のように、ドイツの子供控除、子供手当は子供の生存に最低限必要な条件には課税しないという考えがベースになっているものですから、親の所得に関する制限はありません。

対象になるのは、すべての子供で、就学中であれば25歳までなど広範ですから、子供自身や配偶者に収入がある場合などについて様々な規定があります。天涯孤独の孤児の場合は親の所得からの控除はできませんから、国からの給付として支給されます。

なお、ドイツも少子高齢化の時代を迎え、子供手当がその対策としての意味あいを帯びるようになっているほか、とくに2010年の引き上げのように景気対策としての意味も持つようになっているようです。

※この項はまだ完成していません。さらに歴史などについても記述する予定です。なお、筆者は税制に不案内ですので、本稿についてご指摘いただくべき点、ご教示いただける点などありましたら是非お知らせください。宛先はこちらです

財政計画(Finanzplan )

連邦政府および州政府は、「経済安定成長促進法」および「予算諸原則法」により、予算案の編成にあたって「財政計画(Finanzplan)」を策定することを義務づけられている。財政計画は、予算案の中期的な位置づけや目標を明確にするためのもので、中期的な経済見通しに立って、支出の見通しやそれをカバーするための歳入の見通しなどを示すものであり、予算と同様に重要なものである。

財政計画は予算編成作業が行われている年、予算編成の対象となる年(翌年)およびその後3年間の計5年間について作成する必要がある。したがって、予算および財政計画は毎年策定することになる。このため、ドイツでは制度変更や政府の政策の変更に伴う予算の増減に関する議論は前年の予算と比較した増減ではなく、前年の「財政計画」で予定されていた金額との比較で論じられることが多い。

単年度または2年を対象とする予算案は予算法の付則を成すもので、議会での議決が必要であるが、財政計画は国会の承認の対象ではない。

国全体での調和を図るため、連邦、州、市町村および連邦銀行で構成される「財政計画審議会」が設けられており、各州も連邦と同様に州に与えられた役割を実行するに際して、毎年「州予算」のほかに「財政計画」の策定が必要である。連邦、州、市町村のほか社会保障などの財政を合わせたものが国家財政となる。

航空税(Luftverkehrssteuer)

連邦政府は2010年9月1日、財政改革の一環として新たに航空税制度を導入することを決定し、同制度の導入を含む予算付随法(Haushaltsbegleitgesetz)案は10月28日、連邦議会を通過しました。航空税の概要は次のとおりです。

目的:環境対策の一環(国際レベルあるいはEUレベルで航空機燃料に対する課税が実現しないことに代    わるもの。)
対象:ドイツ国内の空港から出発するすべての商業旅客便(航空貨物は対象とならない)
除外:(1)小型機による遊覧飛行、医療目的、軍の飛行など
     (2)2歳以下の幼児で、座席がない場合
     (3)本土と結ばれていない島嶼への近距離便の一部
税収:総額で年間約10億ユーロ
税額:飛行距離に応じて1人あたり8ユーロ、25ユーロ、45ユーロの3段階(フランクフルト/マインからの距離が
    基準となり、外国への旅行の場合は当該国の最大の空港までの距離が基準となる。これは、旅客
    が渡航先国との国境に近い空港に集中するのを避けるため。したがって、たとえばロシアの場合はフラ
    ンクフルト/マイ ンからモスクワまでの距離が基準となり、極東ロシアへの便でもモスクワ行きと同じ税
    額となる。)
    8ユーロ:法律の附表1の国への航空便(フランクフルト/マインからの距離が2,500km以内=国内便、
         欧州域内の便、その他モロッコ、トルコ、チュニジア、キプロス、ロシアなどへの便)
    25ユーロ:附表2の国への航空便(フランクフルト/マインからの距離が2,500km以上6,000kmまで=エ
         ジプト、イスラエル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの中近東諸国、一部のアフリカ諸
         国などへの便)
    45ユーロ:その他の諸国への航空便(フランクフルト/マインからの距離が6,000km以上=米国、カナダ
         、オーストラリア、ニュージーランド、中国など)
    備考:出発地から最終目的地までが課税の対象で、途中で乗り換えが必要な場合も改めて課税
        されることはない。ただし、旅行を一定時間以上中断する場合(12時間、24時間といったい 
        ゆるストップオーバー)は新たに課税される。
納税義務者:各航空会社
   備考:政府は税額分は運賃に転嫁されるものとみている。
課税開始時期:閣議決定のあった2010年9月1日から実施し、2011年1月1日およびそれ以降に出発する便の航空券の購入または予約に対して課税される。
 
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 -- ドレスデン情報ファイル 2009.04.04--
(更新:2009.04.08, 2010.03.02, 2010.09.021. 2010.11.03)