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ドレスデン情報ファイル

ドイツのエネルギー事情

エネルギー源別発電量

時々刻々と変化する発電のエネルギー構成 (ただいま工事中!

凡例(下から順に):緑色=バイオマス、水色=水力、藍色=洋上風力、青色=陸上風力、黄色:太陽光、灰色=原子力、褐炭、石炭、ガス等従来型発電(斜線は暫定値)、赤い曲線:消費量(点線は暫定値)、茶色の曲線=CO2排出量。 日時はPCに設定されている日時。
  提供: Agora Energiewende

 ドイツ電力・水道事業連盟(BDEW)によるとドイツにおける2023年上半期の発電量は265.9 TWhで、前年同期の298.3 TWhを10.8%下回った。原子力その他従来型の発電が大幅な減少となる一方、再生可能エネルギーは0.6%の小幅な減少にとどまった。この結果総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は51.7%と、全体の半分以上を占めた。
     
2023年のエネルギー源別発電量(単位%)


        データ出所:AGEB Bruttostroemerzeugungn Deutschland nach Energieträgern)


拡大たどる再生可能エネルギー
 ドイツは2011年に脱原発と再生可能エネルギーを推進するエネルギー転換を決定した。原子力発電の段階的停止は同年から開始し、2023年4月15日に完了した。石炭など化石燃料の燃焼に対しては2005年からEUの排出権取引制度による抑制が図られ、国内でも石炭・褐炭発電の削減・停止措置を進めてきた。
 一方、再生可能エネルギーによる電力は固定価格による優先的買い取り制度を背景に拡大を続け、原子力発電や石炭・褐炭発電の減少を十分に補った。
このため、発電に占める再生可能エネルギーの割合が着実に増加してきた。これには、エネルギー効率の向上を背景に電力消費量が2018年以降減少に転じたこともプラスの要因となった。
 とくに2020年はコロナ禍の影響で電力需要が大幅に減少したのに対して、太陽光・風力発電に有利な気象条件に恵まれたこともあって増加し、再生可能エネルギーによる電力が44%に拡大し、2020の目標であった40%%を優に上回った。
 経済の回復に伴って電力消費が増加した2021年には太陽光・風力発電が前年を下回り、増設の遅れが顕在化した。風力発電の増設は2018年以降、それまでの半分以下の水準にとどまった。増設の遅れは景観や生物への影響をめぐる環境問題、設置にかかわる許認可の遅れが主な要因となっていて、とくに南部での増設が遅れていた。
 2022年はウクライナ戦争の影響を受けてロシアからの天然ガスの供給が停止されたが、急遽、米国、アフリカ諸国等からベルギーなどを経由してLNGを輸入するとともに、停止中の石炭発電を再開するなどによって電力供給の維持が図られた。太陽光・風力発電も天候に恵まれて好調であった。一方で、エネルギー・電力価格が大幅に上昇したことから、電力需要が低下した。この結果、同年の電力市場は価格問題を除けば比較的安定して推移したといえる。
 2023年上半期は上述のとおり、電力消費が減少し、再生可能エネルギーの割合が全体の半分以上を占めた。







データ出所(図1~図3):Arbeitsgemeinschaft Energiebilanzen e.V "Stromerzeugung nach Energieträgern 1990 - 2023" (Stand Dezember 2023)
2030年までに80%へ

 ドイツは2023年1月1日に発効した「2023年再生可能エネルギー法」で電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに少なくとも80%とする目標を明示している。2030年時点の電力消費量は約600 MWhと予測しており、現在の消費量をすべて再生可能エネルギーで賄うことになる。さらに、2035年にはCO2ニュートラル(実質的に100%再生可能エネルギー)を達成する計画である。
 そのために、太陽光、風力などによる発電に2030年までの具体的な目標と手段を設定して拡大を急ぐ。陸上風力については毎年の増設を10 GW、2030年までに累計115 GWとする。各州に対しては面積の2%を風力発電に割り当てるよう義務づける。
 洋上風力については同時に発効した洋上風力法により、能力を2030年までに少なくとも現在の3倍の30GWへ、2045年には70 GWに拡大する。
 これまで増設の遅れの大きな要因となってきた計画・認可手続きや環境保護をめぐって相次いできた訴訟については、「再生可能エネルギーの利用は公共の利益として優先され、公共の安全に資する」と明記して、迅速化を図る。そうした関連で連邦自然保護法の手直しも行う。
 どこまで実現できるかはこれから順次示されていく。

 なお、ドイツ政府は再生可能エネルギーの拡大の目的として常に「気候保護」を掲げているが、ほとんどの場合これに併せて「エネルギーの海外依存の削減」を掲げていることは日本としても注目すべきところではないだろうか。


(備考)エネルギー源別の発電量の算出方法について

 このページではエネルギーバランス作業委員会(Arbeitsgemeinschaft Energi-bilanzen e.V=AGEB,)が定期的に発表する総発電量(Bruttostromerzeugung=グロスの発電量)のデータを基にしている。したがって、発電所自身が利用する電力や各種産業が自家発電し、自ら消費する電力や輸出される電力も含まれる。揚水発電による電力(2020年:約6.2TWh)はその他に含まれるが、揚水には電力が使用されるので、その分は二重カウントになっている。

 電力に占める再生可能エネルギーの割合についてはEUが「総発電量から純輸出を差し引いた電力の総消費量に占める再生可能エネルギーの割合」と定めており、ドイツ政府の目標値もこの定義に拠っている。
 ちなみに、この方法で計算すると2023年上半期の再生可能エネルギーの割合は51.7%ではなく、52.3%になる。

 フラウンホーファーISE研究所では、発電所や鉱山業、製造業などにおいて自家発電および自家消費される電力を除いて、実際に公共電力網に供給されるネットの電力とそのエネルギー源別構成を算出して発表している。それによると、2020年の場合、ネットの発電量は488.7TWhで、AGEBの総発電量よりも約15%少なく、再生可能エネルギーの割合は50.1%になる。その場合、再生可能エネルギーによる発電は化石燃料(褐炭、石炭、天然ガスおよび原子力の合計を上回ることになる。

 

更新:2021.02.06、2022.02.28、2022.09.30

  


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