ドイツのエネルギー関係データ |
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再生可能エネルギー拡大の経済効果 |
高コストの再生可能エネルギーへの転換は経済力を損なうか
日本では、コストの高い再生可能エネルギーを普及させようとすると電力料金にはねかえり、産業の国際競争力さらには経済力が損なわれる可能性があるので原子力発電は欠かせないという意見も多い。電力に占める再生可能エネルギーの割合を2050年までに80%に引き上げることをめざすドイツはどうであろうか。原子力発電の廃止を決めたドイツでは風力や太陽光などによる電力を高く買い取り、消費者に負担させるなど、再生可能エネルギーの拡大に大きなコストをかけている。ドイツはこのように再生可能エネルギーを推進しても経済力が大幅に損なわれることはないのだろうか。
ドイツ経済研究所が経済効果を分析
ドイツで最も有力な経済研究所のひとつであるドイツ経済研究所(DIW)が2011年9月、「再生可能エネルギー拡大の経済効果、ドイツに関するモデルに基づく分析(Economic effects of Renewable
Energy Expansion : A Model-Based Analysis for Germany)」と題する報告書を発表した。
同報告書では、「分析の結果、再生可能エネルギーの拡大は成長や雇用について妥協することなく達成することが可能である。分析ではドイツの成長にネットでプラスの効果があることが明らかとなった」としている。
この分析は新たに開発された”Sectoral Energy-Economic Econometric Model (SEEEM)”という計量モデルを用いて行われ、2030年までの期間について、これまでの再生可能エネルギー拡大の実績をベースにしながら今後もドイツ政府の目標に沿って拡大していく場合(拡大シナリオ)と、再生可能エネルギーの促進を行わない場合(ゼロ・シナリオ)を比較して、経済成長や雇用にネットでどのような相違が生まれるか詳細に分析している。
再生可能エネルギーの拡大は経済成長にプラス
その結果、ドイツの実質GDPは、拡大シナリオではゼロ・シナリオと比較して2030年で2.9%高くなるという。2つのシナリオで成長率が相違する主な要因は投資活動と個人消費の増加である。
概略を紹介すると、投資については、再生可能エネルギー設備に対する投資が従来型の発電設備等の減少を上回り、その分誘発効果も大きいことから、2030年には実質民間投資は拡大シナリオの方が6.7%高くなるとしている。
個人消費の伸びが大きくなるのは、再生可能エネルギーの促進で消費者の負担が増すが、再生可能エネルギーへの投資のために生じる生産の拡大を背景とする所得の増加の方が大きいためである。
輸出入については、化石燃料の輸入が減少する一方で、ドイツ製品の価格競争力は低下するが、再生可能エネルギー関連設備や部品の輸出機会が増加する。しかし、ドイツの国内経済が活発化するため、輸入はむしろ増加する。
雇用については、生産性の向上とも関係して、それほど大きな効果は期待できないが、プラスの効果が持続する。
概ね以上であるが、報告書は「再生可能エネルギーへの転換の第1の目的は環境への衝撃を削減し、長期的なエネルギー供給の安定性を改善することであるという点を改めて確認したい。われわれの分析の結果は、所得およびネットの雇用を犠牲にすることなくこれらの利益が得られることを示すものである」と結んでいる。
求められる長期的戦略
報告書では再生可能エネルギーの推進でドイツは世界の一歩先を進んでいるが、分析結果は他の国の参考にもなろうとしている。電力価格の上昇といった目先の損得だけで議論するのではなく、将来に向けた目標設定と確かな戦略を定めることで、企業が自信を持って投資し、消費者が安心して消費できる社会をめざすことが重要であろう。
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表 ドイツにおける再生可能エネルギーの経済効果
(拡大大シナリオとゼロ・シナリオの間の指標の変化:%) |
.項 目 |
2010年 |
2020年 |
2030年 |
GDP |
1.7 |
2.6 |
2.9 |
個人消費 |
1.0 |
2.3 |
3.5 |
民間投資 |
9.1 |
8.9 |
6.7 |
輸出 |
0.9 |
1.2 |
0.9 |
輸入 |
1.0 |
1.0 |
1.0 |
生産性 |
1.7 |
2.6 |
2.9 |
雇用 |
0.1 |
0.0 |
0.0 |
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注) GDPおよび最終需要は2000年を基準とする実質。生産性は1人あたりGDP。民間投資は建設投資を含まない。
出所:ドイツ経済研究所(DIW) Economic Effects of Renewable Energy Expansion, A Model-Based
Analysis for Germany |
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