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    ドイツの持続可能な発展戦略 - ドイツの将来展望
    21世紀の道しるべ
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国民が安心して暮らし、企業が自信をもって 将来のための投資をしていくためには、国がどのような展望のもとに、どのような方向に進んでいこうとするのかが明確に示され、それについて幅広い合意が存在しているのが望ましいのではないだろうか。

ドイツは国連のアジェンダ21に沿って2002年に「持続可能な発展に向けたわれわれの戦略-ドイツの将来展望(Unsere Strategie fuer eine Nachlaltige Entwicklung - Perspektiven fuer Deutschland)」を策定した。その基本にあるのは、現世代は自ら生み出したものによって生き、受け継いだ自然の生活環境や資源を損なうことなく後世に引き継いでいかなければならないという思想である。「持続可能な発展戦略」は、そのために環境・エネルギーにとどまらず、経済・財政、社会、教育、健康など幅広い分野にわたって、達成すべき目標を具体的な数字で示したもので、政治的決定や立法の指針となり、国民や企業にもそれに沿った行動が期待されている。

設定した目標については公式統計に基づいて2年毎に達成度が検証され、「指標報告書」として公表されている。また、国を取り巻く環境や情勢の変化に対応するため、4年毎に国民的議論を経て戦略の見直しが行われているが、もともと超党派で決められた指針であり、政権交代後もその基本線は変わっていない。また、州や市町村あるいは企業や団体などさまざまレベルで同じような取り組みが行われている。

以下に紹介するのは2014年6月に発表された国の「指標報告書」の概要である。小項目で38項目あり、中には日本の方が進展していると思われる事項もあるが、さまざまな施策が相まってはじめて達成が可能な象徴的な目標もあり、意外に思われる項目も多いのではなかろうか。高い達成度を示す「快晴」のマークは見る人を「ハッピー」にさせるし、目標達成からほど遠いことを示す「嵐」のマークはさらなる奮起を促しているように見える。
背景が空色の項目は前回2012年の報告書と比べて改善した項目(8項目)、灰色の背景は悪化した項目(3項目)である。
2014年 指標報告書 (Indikatorenbericht) の概要
.指標と目標値 2013年
実績
評価
 I. 世代間の公平
1 資源の節約と効率的利用.
1a 2020年のエネルギー1単位あたりのGDP(エネルギー生産性)を1990年の2倍(指数で200)とする。 145.4
1b 2020年の一次エネルギー消費を2008年の20%減(1990年の76.3%)とする。2050年は50%減(同47.7%)とする。 93.3%
1c 2020年の資源生産性を1994年の2倍(200)とする。 149.2
2 温暖化ガスの排出量を削減.,
2008年から2012年までの平均で温暖化ガスの排出量を1990年の21%減とする。2020年の排出量を同40%減、2050年は同80~95%減とする。 23.6%減
3 将来も有効なエネルギー供給を拡大..
3a 最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに18%、2050年までに60%とする。 12.3%
3b 発電に占める再生可能エネルギーの割合を2010年までに12.5%、2020年までに35%、2050年までに80%とする。 25.4%
4 国土の持続的利用..
生活、商工業、交通に利用される土地の増加を2020年までに1日あたり30ヘクタール以下とする。(1993~96年は120ha) 69ha
5 種を維持し、生活空間の質を守る..
59種の野鳥の生存数でみた種の多様性と生息環境の質を100とする。(1975年は101。) 63
(2011年)
6 財政を健全化し、世代間の公平を確保..
6a 国家財政の赤字幅をマーストリヒト基準に沿って常にGDPの3%以下とする。 0.0%
6b 構造的赤字の幅をGDPの0.5%以下とする。 +0.7%
6c 累積債務をEUの安定・成長協定に沿ってGDPの60%以内とする。 78.4%
7 優れた投資環境を整え、豊かさを長期的に維持..
GDPに対する総設備投資(住宅を含む建物、機械、車両、ソフトウェア、著作権、不動産移転、有用動物)の割合を適切な水準に保つ。 17.2%
8 新たな解決策で未来を形成..
GDPに対する民間・政府の研究開発支出の割合を2020年までに3%とする。 3.0%
(2012年)
9 教育と資格を絶えず向上..
9a 18歳~24歳人口に占める一般教育・職業教育非修了者の割合を2020年までに10%以下とする。 10.4%
(2012年)
9b 30歳~35歳人口に占める高等教育(国際標準教育分類の5および6、および4)修了者の割合を2020年までに42%とする。 43.4%
9c 大学進学者の割合を2010年までに40%以上とし、その後も高い水準を維持する。 53.2%
 II. 生活の質..
10 環境および社会の負担をかけずに経済力を向上..
環境に負担をかけず、雇用や福祉を維持しつつ、一人あたりのGDPを向上させる。 3万ユーロ
11 モビリティを確保し、環境を大切に..
11a GDPに対する道路、鉄道、内陸水路、パイプラインおよび国内空路の輸送量(トン/km)でみた貨物輸送密度を1999年比で2010年には2%、2020年にはさらに3ポイント引下げる。 +8.0%
11b GDPに対する旅客輸送量(人/km)でみた旅客輸送密度を1999年比で2010年までに10%、2020年までに20%引下げる。 -9.0%
11c 国内の貨物輸送に占める鉄道の割合を2015年までに25%に引き上げる。 18.2%
11d 国内の貨物輸送に占める内陸水路の割合を2015年までに14%に引き上げる。 9.7%
12 環境に負担を及ぼさない農業生産..
12a 農地1ヘクタールあたりの年間過剰窒素の量を1990年の149トンから2010年には80トンに削減する。 98トン
(2012年)
12b 有機農業の割合を農地面積の割合で20%とする。 5.8%
(2012年)
13 健康に良い環境の維持..
二酸化硫黄、窒素酸化物、アンモニア、非メタン炭化水素の排出量でみた大気の汚染を2010年には1990年比で30とする。 40.4
(2012年)
14 健康な生活を長く..
14a 65歳以下の早期死亡率を1991年の人口10万人あたり381人から2015年までに190人以下とする。(男性 217人
(2012年)
14b 65歳以下の早期死亡率を1991年の人口10万人あたり200人から2015年までに115人以下とする。(女性 130人
(2012年)
14c 若者(12歳~17歳)の喫煙率を2015年までに12%以下にする。 12%
(2012年)
14d 一般(15歳以上)の喫煙率を2015年までに22%以下にする。 26%
(2009年)
14e 18歳以上の肥満率を2015年までに引下げる。 14.7%
(2009年)
15 生活の安全性の向上..
警察に届けられ、統計に計上される犯罪を2020年までに人口10万人当たり7,000件以下とする。 7,327件
(2012年)
16 就業率の向上..
16a 労働力人口(15歳~64歳)の就業率を2010年までに73%、2020年までに75%に引き上げる。 72.6%
16b 高齢者(55歳~64歳)の就業者率を2010年までに55%、2020年までに60%に引き上げる。 61.2%
 III. 社会の一体性..
17 家庭と職業の両立生の改善..
17a 0~2歳児の全日制託児所受入能力を2010年までに全体の30%、2020年までに同35%に引き上げる。 13.7%
17b 3~5歳児の全日制託児所の受入能力を2010年までに全体の30%、2020年までに同60%に引き上げる。 39.1%
18 社会における平等性の推進..
時間あたり総賃金額の男女間格差を2010年までに15%以下、2020年までに10%以下にする。 22%
19 区別ではなく統合を..
外国人児童のHauptschule(9~10学年)以上の終了率を2020年までにドイツ人児童と同率(2012年現在94.2%)とする。 88.6%
(2009年)
 IV. 国際的責務..
20 持続的開発を支援..
GDPに占める公的開発援助の割合を2010年までに0.51%、2015年までに0.7%とする。 0.37%
21 発展途上国の貿易機会を改善..
発展途上国からの輸入を1995年比で拡大する。 4.5倍
(2012年)
 資料:連邦統計庁(Statistisches Bundesamt)、Indikatorenbericht 2014
 参考:2012年報告書
    
   -- ドレスデン情報ファイル 2014.11.06 --