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気候保護政策の展開

ドイツでは地球温暖化の問題が早くから認識され、気候保護の必要性について経済・社会の幅広い合意を形成しつつ、具体的な目標を設定し、法制化することで着実な実現を図ってきた。
 

 この項では地球温暖化の抑制のために必要な2050年までの温室効果ガスの削減量を示した1987年の連邦議会アンケート委員会の報告以降の主な措置を時系列的に示していく。


1987年
連邦議会に「調査委員会(アンケートコミッション):地球環境保護に備える(Vorsorge zum Schutz der Erdatmosphäre)」を設置。
 
 第1回報告書(1988年):フレオンガスの代替、エネルギーの合理的利用の必要性など、全般について報告
 
 第2回報告書(1990年5月):熱帯雨林の保護、再生について国際協定、基金の設立、2010年までに破壊を完全に停止し、2030年までに1990年の状態を回復させることを提言
 
 第3回報告書(1990年):地球の保護に関する1,700ページに及ぶ報告書で気候およびエネルギーに関する国際協定の締結などドイツ、EUおよび世界がとるべき行動を提言。目標として、世界でCO2の排出量を2005年までに5%、2050年までに50%削減し、地域別にも2050年までに途上国70%増、EU80%減、工業国全体80%減などを提示。CO2排出削減のためにエネルギー、交通などの分野別に法規制の強化、金融措置などを提言。

2000年4月1日
再生可能エネルギー法(EEG)発効

 
 京都議定書(温室効果ガスの排出量を2008年~2012年までに1990年比で21%削減)などの達成のため、2010年までに電力消費に占める再生可能エネルギーの倍増、グリーン電力の固定価格での引き取り義務などを定めた。

 再生可能エネルギー法はその後数次にわたって改正され、2021年からは大幅に改正された改正再生可能エネルギー法が発効する。

2000年6月11日
連邦政府と電力産業の原子力合意


社会民主党・緑の党連立政権が電力業界との間で原子力発電所を稼働開始後概ね30年で停止することで合意。これに基づく改正原子力法は2002年4月22日発効。

2002年4月
持続可能な発展に向けたわれわれの戦略-ドイツの将来展望
(Unsere Strategie fuer eine Nachlaltige Entwicklung - Perspektiven fuer Deutschland)を策定。

国連環境・開発会議(1992年)の合意に基づいて、国がめざす将来像を描き、世代間の公平、生活の質、社会の一体性、国際責務も観点から、エネルギー・資源の生産性、京都議定書に沿った温室効果ガスの削減、再生可能エネルギーの拡大、財政収支、研究開発など広範な分野について2010年までの具体的な目標を設定。2年毎に達成度を点検し、4年毎に見直している。

2010年9月28日
エネルギー政策大綱
(Enerigiekonzept der Bundesregierung)を決定

石油価格高騰を背景に、原子力発電の稼働を12年程度延長するにあたり、その間に再生可能エネルギーの拡大を強力に推進することとして、具体的な目標を設定した。
*2030年の目標は2013年の連立協定、石炭委員会勧告を経て、65%に引き上げられた。
エネルギー政策大綱(エネルギー・コンセプト)の主要目標(2010年)

   2020年  2030年  2040年 2050年 
温室効果ガス排出量(1990年比)  -40%  -55%  -70% -80~95% 
エネルギー消費に占める
再生可能エネルギーの割合
 最低35% 最低50%* 最低65%  最低80%
    *2030年の目標は2013年の連立協定、石炭委員会勧告を経て、65%に引き上げられた。


2011年6月
脱原発と再生可能エネルギーの拡大の加速化を決定。


福島原発事故を契機に保有原発の半数近くを即時停止するとともに、残りを段階的に停止し、2020年までに全廃することを決定。
2012年1月1日
2012年再生可能エネルギー法(Erneuerbare-Energien-Gestz)発効


エネルギー政策大綱(2010年9月28日)の諸目標を盛り込み、温室効果ガスを2030年までに1900年比で50%、2050年までに80~95%削減することをはじめて法律で定めた。

2016年11月14日
気候保護計画2050(Klimaschutzplan 2050)を閣議決定


2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的ゼロとするまでの道筋を設定している。パリ気候保護協定で合意された2030年までの中間目標に沿って、はじめて分野別の削減目標を具体的に示し、それらを達成するための構想を掲げた。


ベルリン郊外のヴァンゼー
2016年4月27日
電気自動車購入奨励金の導入を政府と自動車産業界で決定


電気自動車の普及を促進するため、電気自動車の購入者に対して政府と自動車メーカーが折半で奨励金を支給することで合意。

2018年6月6日
成長・構造変化・雇用委員会(石炭委員会)を設置


脱石炭およびそれに伴う地域経済への打撃に対する対策について、利害の異なる関係者の幅広い合意を形成するために政界、経済界、電力業界、環境団体、労働組合、学界、関係各州・地域の代表等31名で構成された。

脱石炭のタイムスケジュール、方法・補償、産炭地域の構造改善策などを審議。

2019年1月31日
成長・構造変化・雇用委員会(石炭委員会)が答申を提出。


① 産炭地域の経済構造改善のために20年間で20億ユーロの支援、②高年従業員の生活保障、③脱石炭のタイムテーブル(遅くとも2038年までに石炭発電を全廃、可能なら2025年)、③石炭発電、褐炭発電の停止に対する補償、④2030年の電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を65%に引き上げ、⑤コージェネ・システムへの転換の支援などを答申

2019年10月9日
気候保護プログラム2030
(Klimaschutzprogramm 2030)を閣議決定

温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年比で55%削減するため、はじめて分野別に削減目標を設定し、そのための諸措置を具体的に示した。

主なものは暖房油・自動車用燃料用に対する炭素税の導入*、住宅改修費の税制優遇・補助、電気自動車の購入奨励金制度、電力料金の引き下げなどを掲げ、それらを実施するための法律、補助制度の設定などを行っていくとしている。

*炭素税については当初1トンあたり10ユーロとしていたが、その後引き上げて25ユーロからスタートすることになった。

2019年12月18日
連邦気候保護法(Bundes-Klimaschutzgesetz)が発効


2050年までにドイツを気候中立化することを目指して、温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年比で55%削減することを定めている。これにより、ドイツは気候保護目標を拘束力のある法律で定めた最初の国となった。

この法律ではセクターごとにCO2排出量の上限を定めており、連邦の各省は電力、産業、建物、交通、農林業および廃棄物処理業の各分野における年間の目標排出量の維持に努めるよう義務づけられた。
独立した審議会を設けて達成状況を監視し、必要に応じて迅速に対応する仕組みも定めている。

2020年8月14日
脱石炭法(石炭発電の削減と終了および関連法規の改正に関する法律)が発効


① 石炭・褐炭発電を段階的に削減し、遅くとも2038年までに、可能なら2025年までに廃止するための手続き、②高年従業員に対する生活保障、③エネルギー集約的産業に対する補助制度、④温室効果ガス中立の熱発生と利用。

関連法規の改正として、①再生可能エネルギー法に65%の目標設定、②コージェネ発電の支援措置を2030年まで延長、③不要になる排出権の抹消などがある。

2020年11月11日
燃料排出量取引法改正法
(Gesetz zur Änderung des Brennstoffemissionshandelsgesetzes)が発効=CO2課税、炭素税の導入

2021年1月から暖房油、天然ガス、ガソリンおよびディーゼル燃料の元売会社に対してCO2価格を徴収する法律。元売会社に対して、販売する燃料が排出するCO2に対して排出権の取得を義務づける。2021年から1トンあたり25ユーロ、その後2025年の55ユーロまで段階的に引き上げ。2026年以降は55ユーロから65ユーロの間になるよう調整する。(当初の段階では、ガソリンの場合、価格が約7.5%上昇すると算定されている。)

通勤者に対する所得控除(Pendlerpauschale)を㎞あたり5セント引き上げ。

排出権販売収入の一部は再生可能エネルギー付加金の引き下げにも充当する。

2020年12月1日
第1回石炭発電停止の入札結果発表


9月に募集を開始した第1回石炭発電停止の入札で、予想を上回る4.788GWの応札があった。
2021年1月1日(予定)
改正再生可能エネルギー法発効


2030年の電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を65%とすることを目標に設定。具体的には、①新設が停滞気味の風力発電容量を2019年末の54GWから2030年までに71GWに引き上げる、とくに南ドイツの風力発電を拡大させる、②太陽光発電を年間4,6~5.6GW拡大すること歳、そのための促進措置を定める予定、
 
 
 

 
  -- 2020.12.15 ドレスデン情報ファイル--